宇宙の“箱”を開ける 第6回

今日から、ようやくやっと研究の話ができそうです。ここまで長かった…笑

さて、前回のおさらいからいきましょう。ブラックホールの中がどうなっているのかを知るためには、一般相対性理論を超えた量子重力理論が必要であるということを述べました。しかし、この量子重力理論は未だ完成していません。そこで登場するのが「修正重力理論」です。

修正重力理論とはその名の通り、一般相対性理論を修正した重力理論です。

一般相対性理論はアインシュタイン方程式

を解くことで、ある物質分布に対応してどんな重力場ができるのかということが分かります。この方程式を直接修正することも考えられるのですが、このままだとなんでもかんでも変更できてしまいます。そこで一般的には方程式ではなく、その親玉である「作用」と呼ばれるものを修正していくことになります。一般相対性理論の作用Sはアインヒルベルト作用と呼ばれるもので、以下のような形をしています。

ここで、Rはリッチスカラーという曲率(時空の歪み具合)を表す量です。この作用に変分という操作をすることによってアインシュタイン方程式を導くことができます。ここの部分は計算が大変なのでここでは触れません。今は、「方程式」の親玉みたいなものに「作用」というものがあって、修正重力理論ではここに修正を加えていくんだなぁと思っていただければ十分です。

では、どのような修正を加えるのが良いのでしょうか。量子重力理論は確かに未完成ではありますが、いくつかの共通する性質を持っています。その共通する性質を一般相対性理論に組み込むことで、一般相対性理論と量子重力理論の架け橋になるような理論を構築しよう、という試みが修正重力理論です。しかし、この修正重力理論には非常に多くの種類があります。そのため、今回は僕の研究テーマである、Infinite Derivative Gravity についてご紹介しようと思います。

Infinite Derivative Gravity (IDG)とは、直訳すると「無限階の微分を持つ重力理論」となります。〇〇階とは、微分した回数の数え方で、無限解微分とはある関数を無限回微分するということを表しています。この理論は、先ほど示したアインシュタインヒルベルト作用に無限階微分を含んだ補正項を加えます。具体的には、

という補正項を加えます。この□をダランベルシアンと呼び、これ一個で2回微分する事になります。(ここで、Ms という量が新たに現れました。これは修正が必要になるスケールを表しています。今はそこまで関係ないので気にしなくて大丈夫です。)さて、無限階微分は

という所に現れています。あんまり無限階という気もしませんね。そこでこの指数関数をテイラー展開してみます。テイラー展開とは、関数をベキ関数(xの○乗)の足しあわせとして表現する方法で、指数関数の場合は

と表せて、xの無限乗を最後尾に含む事になります。今、このxにダランベルシアンを代入すると最後尾に無限階微分が現れる事になります。

さて、方程式の親玉である作用が得られました。あとは変分という操作をすれば方程式が得られる事になります。このステップはとても長いため全てすっ飛ばして結果だけお見せすると、

となります。それではまた。笑

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